ストレス等が加わると、自分では意識していなくても、知らず知らずのうちに歯を食いしばったりしてしまうことがあります。
また、よく噛むようにと教わり、ついつい力をいれて噛む力が強くなっていませんか?
よく噛むことを意識し、噛むことが習慣づいてくると、噛む強さが強い状態になっていてそれが常態化してしまうことがあります。
朝起きた時、あごが痛い、家族に歯ぎしりを指摘された、などの経験はありませんか?
あごが痛い、そのようなことを感じることがあれば、先に述べたように、無意識のうちに歯に負担をかけてしまっている可能性があります。
眠っている間、気づかぬうちに歯に負担をかけてしまっているという可能性があるのです。
つまり、寝ている間は無意識のうちに力が加わっているのです。
そんな時、歯科での治療のひとつとして「ボトックス治療(ボツリトキシン治療)」があります。
大崎シティデンタルクリニックでも取り入れているボトックス治療(ボツリトキシン治療)は、この治療だけでも症状は改善されます。
マウスピースと併用して行うことでも症状の改善が期待できます。
ボトックス治療(ボツリヌストキシン治療)ってなんですか?
ボトックス(ボツリヌストキシン)治療とは、ボツリヌス菌(ボツリヌストキシン)の中に含まれる天然のタンパク質「ボツリヌストキシン」を主な原料とした薬を筋肉の中に注射する治療方法です。
ボツリヌス菌の作用の特徴としましては、筋肉の緊張に関する神経の働きを抑制するというものがあります。
そのためボツリヌス菌(ボツリヌストキシン)を注射すると、筋肉の緊張を和らげることができるのです。
ボトックス注射は局所的に注射をし、筋肉の緊張を弱めることで、強い食いしばりや、歯ぎしり、あごの緊張などを弱める効果が期待できます。
ボトックス(ボツリヌストキシン)治療ではエラの外側あたりにある咬筋に注射をします。
皮膚のほっぺ側からの注射です。
お口の内側には歯を支える骨(歯槽骨)があるため、口の外側の皮膚から注入します。
ボトックス治療自体は歯科以外でも、用いられています。
脳卒中の後遺症としてみられる手足の緊張を緩和させる治療や、まぶたや顔面の痙攣(けいれん)、表情ジワを目立たなくするなど、さまざまな医療現場で用いられている治療法です。
ボトックスとはなんですか?
ボトックスとは薬剤の名称で、ボツリヌス菌から抽出された、一種のタンパク質を使用しています。
ボツリヌス毒素と呼ばれますが、これは筋肉への指令を妨害する働きがあります。
筋肉は神経からの伝達信号で動きます。
この伝達信号をボツリヌス毒素で妨害することにより、筋肉の緊張をゆるめることができるのです。
この作用を適度に利用し、緊張が過度にかかっている筋肉をゆるめ、日常生活に支障が出るような症状を改善することができるのです。
ボツリヌスというと食中毒の原因菌とされる菌、有毒とされていますが、ボトックスの場合、有効成分のみを抽出し、人体には無害な状態で注入します。
日本で使用されるボトックスは、現在海外の製薬会社で製造されたものを輸入しています。
ボトックスはピンポイントで作用させることができ、注入した部分の筋肉への神経伝達信号をブロックし、動かそうとしても動かなくさせる作用があります。
人間のからだは筋肉の動きによって形が変わります。そして筋肉が過剰に動き、発達することがあります。
過剰にはたらく筋肉にボトックス注射をすることで、筋肉のこわばりやつっぱりをやわらげます。
つまり、ボトックス注射によって必要のない筋肉の動きをブロックします。
歯科でおこなうボトックス治療とは何のためにするのですか?
ボトックス注射というと、美容外科では、しわ取りや小顔効果を期待してよく使われています。
美容外科の場合は主に、眉間のしわや目尻のしわ、おでこのしわなどが生じるのを抑えます。
わき汗を抑える治療にも用いられます。
では、小顔効果への使用はどのようなものでしょうか。
顔を小顔にするという手法の中に張り出したエラを目立たなくするという手法がありますが、そこにボトックス注射を活用するということになります。
エラ付近の筋肉にボトックス注射をし、筋肉を小さくします。
その結果エラが目立たなくなり小顔になるというメカニズムです。
美容外科以外でも脳神経外科では、脳卒中の後遺症としてみられる運動障害の治療や、瞼(まぶた)が痙攣(けいれん)する「眼瞼痙攣」、顔面が痙攣する「片側顔面痙攣」などの治療に用いられます。
歯医者においてもボトックス治療は有効的な治療法で、欧米では一般的に広く知られています。
歯医者においてのボトックス治療は、主に噛む力によって生じる様々な症状の治療に用いられています。
噛む力が強すぎることで起こる歯ぎしり・食いしばり・顎関節症などは、無意識のうちに行っており、自分では分かっていても、あるいは分かっていなくても、自然に治すことは困難です。
他にも噛む力が強すぎることから起こる症状には、つぎのようなことが考えられます。
自覚のある方はこれらの症状はボトックス治療によって改善される可能性があります。
整形外科や神経外科、他の診療科目で診てもらったけれど、症状が改善されない場合、もしかしたら歯医者さんで改善されるかもしれません。
また、自分では気づかず歯科で噛む力が強い、歯がすり減ってるなどの指摘をされた方も、筋肉のこわばりを緩和させるということにおいては、ボトックス治療が効果的です。
歯のすり減りやエラの張りが気になるという方、もしかしたら歯ぎしり・食いしばりが原因となっている場合もありますので、ぜひともご相談ください。
ボトックス治療の歯科的効能・効果ってなんですか?
ボトックス治療を歯医者さんでおこなうことで、主に以下の効果が期待できます。
歯ぎしりの改善
朝起きた時に、歯が痛む、歯がしみる、顎がだるい、顔がこわばるなどの症状を感じたことはありませんか?
寝ている間、無意識のうちに歯ぎしりやくいしばりによって、顎に力が入り、歯の破折や摩耗、歯周組織の破壊が引き起こされます。
無意識というのは夜間だけではありません。
日中も、仕事等のストレス、スポーツなどで力を入れた瞬間や緊張する場面等、無意識に歯ぎしりやくいしばりは発生します。
ひどい歯ぎしりや食いしばりは肩こりや頭痛を引き起こすこともあります。
夜間の歯ぎしりや食いしばりに対しては、ナイトガードと呼ばれるマウスピースを装着し、力の分散をする方法があります。
しかし、マウスピースは毎日装着しないと効果は感じにくいという難点があります。
また、マウスピースを入れて寝るのが嫌になったり、マウスピースをつけているせいでよく眠れないという人もいます。
お酒を飲んで寝ると忘れてしまったり、しばらく使っていた習慣が途絶えてしまうこともあります。
マウスピースをつけることが大変でない方には安易な方法ではあります。
とはいえ食いしばりや歯ぎしり、噛みしめなどの行為そのものがなくなるわけではありません。
生涯続くと言ってもいいこのような行動をコントロールするのは大変ですよね。
ボトックス治療は咬合力そのものを低下させます。過剰な噛む力そのものを和らげます。
ボトックス治療は昼夜を問わず無意識に発生してしまう、歯ぎしり、噛みしめ、くいしばりの緩和に期待ができるのです。
マウスピースと併用して使うことで、マウスピースの摩耗も減りますし、より効果が期待できるともいえます。
咬筋発達によるエラの張りの解消
咬筋とは食べ物を咀嚼する時に使われる最も強い筋肉のことです。
「よく噛んで食べましょう」と幼いころ言われていましたよね。
よく噛むことは確かに消化という意味では大切なのですが、嚙む力が強すぎるのも良くないのです。
ガム等をいつも噛んでいる習慣のある方や、食べもののなかでも硬いものを好んで噛む、噛みしめ癖、歯ぎしり等が原因で咬筋が必要以上に発達、肥大した状態を咬筋肥大といいます。
噛みしめの原因として、上下の歯がいつも接していることが挙げられます。
本来なら、上下の歯が接するのは、会話や食事の時などで一日のうちで平均17分といわれています。
それ以外の時間は舌を上あごにつけて歯は1mm~2mm離れているのが正常です。
ところが上下の歯が常に接触しているのがあたりまえになっていたり、癖になっているのが噛みしめの原因といえます。
また、日々の生活の中では噛みしめるきっかけになるようなことはいつの間にかやっていたりします。
たとえば、パソコンやスマホで下を向いていたり、スポーツで力が入っていたり、料理で包丁を使っている時、読書やテレビ、映画やゲームの時間など、集中や没頭して緊張状態が続くことも、上下の歯を接触し続けてしまいがちになります。
咬筋が発達して咬筋肥大となると頭痛、肩こり等がおこりやすくなります。
また、歯根破折など歯を破壊してしまうことも珍しくありません。
日頃の生活で無意識にしていたことが咬筋肥大となって、身体の不調につながっているとしたら、気づくのはなかなか難しいことかもしれません。
必ずしも身体の不調が上記のような原因だけとは断定できませんが、ボトックス治療では、咬筋肥大のような発達した筋肉の働きを抑えることが可能です。
顎関節症の改善
「口が開きにくい」「顎関節が痛む」「顎関節からカクカクと音が鳴る」といった症状が顎関節症ではみられます。
このような症状に対し、ボトックス治療によるアプローチが可能です。
顎(あご)は微妙に入り組んだ形と機能を持っています。
筋肉、関節、神経が複雑に、集中して存在し、下顎を支えるという構造になっています。
食事をしたりおしゃべりをしたりすると連動して動いています。
顎の関節や顎の周囲に痛みがあったり、顎が動きにくくなるのが顎関節症です。
近頃の傾向として顎の不快感、つまり顎の関節の不快感を感じる人が増えています。
顎が思い通りに動かず、食べものが噛みにくい、顎を動かすと不快な音がする、痛みを感じて口が開かない。
さらに症状が顎だけでなく、肩こりや、腕や指にしびれがおこったり、頭痛、耳や鼻の不快を感じることもあります。
顎関節症の症状は多岐にわたり、人によって症状が軽かったり重い症状だったり、個人差があることも特徴です。
重い症状の場合、放置しておくと顎の機能が失われることもまれにありますので、症状が気になる方は早めの受診をお勧めします。
これまで、顎関節症の治療はマウスピースを用いるのが一般的でした。
マウスピースで顎関節への負担を軽減させ症状を改善させるというものでした。
上下の咬み合わせが均等に接することでスムーズになることもあります。これは比較的軽度な場合です。
顎の関節が正しい位置にもどり、筋肉の緊張がとれ、スムーズに動かすようになれば良いのです。
しかし、重症の場合には、選択肢の一つとして最近ではボトックス治療も一般的になってきました。
筋肉に直接作用するボトックス治療は、自分の意志に関係なく筋肉をリラックスさせることができます。
そこにマウスピースを併用することによる相乗効果でレベルの高い治療が可能です。
そのため、家事や育児で、自分の身体のケアがなかなかできない方、出張が多かったり仕事でお忙しい方、生活時間が不規則な方などにおすすめです。
歯ぎしりが原因で歯周病となっている方の治療
歯ぎしりによって歯周病が悪化することもあります。
ボトックス治療により、歯周病の治療にも役立ちます。
歯周病にかかると、歯茎に負担がかかり、歯がぐらぐらしたり、歯が抜けるなどの症状が見られます。
歯ぎしりの歯や歯茎への負担は相当に強いものがあります。
会話や食事の際も歯や歯茎に負担はかかりますが、歯ぎしりはその何十倍もかかります。
歯や歯茎に強い負担がかかり続けることにより、歯肉に炎症が発生し歯周病がひどくなることにもつながります。
歯周病は歯ぎしり以外にも歯周ポケットに存在するプラークという細菌や喫煙、食生活、全身疾患の有無など、原因はさまざまに考えられます。
歯周病は全身の様々な病気のリスクとなります。
たとえば、血糖値を下げるインスリンの働きを悪化させたり(糖尿病)、早産、低体重児出産、肥満、血管の動脈硬化(心筋梗塞。脳梗塞)などです。
他にも歯周病菌によるリスクの中に誤嚥性肺炎があります。
これは歯周病菌が誤嚥によって肺まで到達し誤嚥性肺炎を発症してしまうリスクです。
またアルツハイマー病悪化にも関与しています。
歯ぎしりから歯周病にり患してしまうと、単に口の問題ではなく全身疾患に関わってくることにもなるのです。
オトガイ(あごの梅干しのようなしわ)の改善
オトガイとは顎先のことで、その人の顔の美しさや印象を決めるところでもあります。
その顎先にオトガイ筋というシワが現れることがあります。
オトガイ筋は下唇を上に強く持ち上げると現れますが、過度に緊張すると梅干し状のシワが目立ち、写真撮影等の際には気になる人もいるのではないでしょうか。
歯科矯正治療により解消することもありますが、ボトックス治療により改善することも期待できると考えられます。
ガミースマイル(笑うと歯茎が見えすぎてしまう状態)の改善
ボトックスの筋肉を弱める作用を応用してガミースマイルの改善を行うことができます。
ガミースマイルとは、笑った時に歯茎が見える状態で、3mm以上歯茎が見えるとそう呼ばれることがあります。
ガミースマイルの印象は人によって好意的に感じる人もいますが、コンプレックスを持っている人も少なくありません。
人前で思いっきり笑えない等精神的にもマイナス面がある場合も考えられます。
ガミースマイルの原因は上唇が上がりすぎる状態によるものなので、ボトックス治療により、この状態を抑制します。
上唇の上げ下げをコントロールしている上唇挙筋群にボトックス注射をします。
メスをつかう外科的手術に比べて、日常生活の制限もなく比較的手軽にできる治療法です。
口呼吸の緩和
口呼吸なら歯ぎしりや食いしばりがない?そう思うかもしれませんが実は逆です。
口呼吸をしている人は眠っている間、起きている時の過緊張をそのまま睡眠時にも持ち込んで食いしばりや歯ぎしりをしています。
鼻で呼吸ができていないため、いびきをかきやすく、睡眠時無呼吸症候群になりやすいと言われています。
本来、リラックスして眠っている時は上下の歯と歯の間がやや開いた状態で唇は閉じていて鼻呼吸しているのが理想です。
しかし口呼吸の人は寝ている時も口が開いたまま、無防備な状態で決して安眠とは言えない状態です。
また、花粉症の原因にも様々ありますが、口呼吸もその一つです。
鼻呼吸であれば空気中の花粉や、汚染物質、細菌、バクテリアなどを鼻の機能がろ過してくれますが、口呼吸であればこれらがダイレクトに体内に入ってしまいます。
花粉症のほか、ぜんそくやアレルギー疾患など、この口呼吸が原因のひとつと考えられます。
寝ている間は副交感神経が優位になるように、あおむけで寝る、歯と歯の間が1mmほど空いていて唇が閉じている状態が安眠につながります。
口呼吸だと安眠の妨げにもなり、睡眠の質が悪くなります。
もし、歯ぎしりや食いしばりが改善できたら、呼吸も変わるかもしれません。
このように、歯科でボトックス治療を受けることで得られる効能・効果はさまざまです。
ボトックス治療の副作用・注意点
ボトックス治療を受けるにあたっては、以下のような副作用・注意点を理解しておきましょう。
- 体の倦怠感や微熱などを伴うことがあります。
- 施術当日の皮膚の突っ張った感じや、一時的な頭痛を発症する可能性があります。
- 施術日より数日間は、施術部周辺に重たい感じを感じることや、こわばったような違和感を感じる感覚がある場合があります。
- 施術部付近に出血や内出血が出る場合があります。
- アレルギー症状が出ることがあります。
- 暫く口角が上がりにくくなる方、ほうれい線、マリオネットラインが強くなる方がいらっしゃいます。
- 注射した部分をこすったり、マッサージしたりしないようにしましょう。
- 筋肉の弛緩によって、一時的に表情が不自然になったり、食事が摂りにくくなることがあります。
- 妊娠中、授乳中、妊娠の疑いがある方は施術を受けられません。
- 治療期間中、少なくとも半年程度は避妊する必要があります。
- 筋弛緩作用のある薬を内服中の方は、施術を受けられない場合があります。
- 永久的な効果はありません。おおむね3ヶ月~6ヶ月です。
- 効果の程度には個人差がございます。
ボトックス治療がお勧めな患者様
ボトックス治療はこのような方におすすめします。
- 口が大きく開かない、顎が痛む、あごの関節が鳴る、など顎関節症の方
- 就寝中の歯ぎしりがひどく、歯ぎしりによる歯の摩耗(すり減る)がある方
- 食いしばる癖がある方
ぜひ一度、当院にご相談ください。
当院でのボトックス治療法
大崎シティデンタルクリニックでは下記のような流れでボトックス治療を行っております。
治療の流れ
【STEP1】問診 カウンセリング 検査:噛む筋肉の確認、ボトックスを打つ場所の確認を行います。
【STEP2】ボトックス治療:アイシングを3分程度行い、痛みを感じにくくしボトックス注射を行います。
【STEP3】定期的な施術:ボトックス治療は完了ということはなく約3ヶ月~6ヶ月でボトックスの効果が弱まるので定期的に注射をすることでより持続します。
治療費
治療費に関しては患者様それぞれのケースによりますのでクリニックまでお問い合わせください。
よくあるご質問
痛みはありますか?
個人差はありますが、痛みを軽減するために表面麻酔をします。また最近では注射の針は非常に細くなっており痛みを感じにくくなっています。
ダウンタイムはありますか?
ダウンタイム(施術後に部位が治癒するまでの時間)はありません。施術後はそのままお帰りいただけます。
治療後にお酒は飲んでも大丈夫ですか?
過度でなければお酒を飲んでも構いません。ただし、施術後に発熱や腫れがあるときは飲酒を控えたほうが好ましいでしょう。
注射後は通院しなくてもよいのですか?
通院の必要はありません。腫れや痛みを生じたり、内出血のあとが消えなかったりした場合にはご相談ください。
まとめ
歯科で行われるボトックス治療、すべての歯科で行われている治療ではありませんが、顎関節症、食いしばり、歯ぎしりなどのお悩みをお持ちの方にとっては、マウスピース以外にも考えられる治療の選択肢の一つとして考えられます。