プラセンタ療法
お肌や全身の細胞の若返り治療に用いられる「プラセンタ」ですが、そのプラセンタの効能を歯科治療に応用する「プラセンタ療法」は長年活用されています。
では歯科治療におけるプラセンタ療法はどのように行われているものなのでしょうか。
プラセンタとは
プラセンタとは、母体と胎児を結ぶ胎盤から抽出されるエキスのことで、母親がお腹の胎児へ栄養分を供給することは勿論、免疫を殆ど保有していない胎児の身体を毒物などから守る免疫機能の役割をも担っています。
生命を誕生させ、お腹で立派な胎児として育てるための必要な栄養素(ビタミン、アミノ酸、コラーゲン、ヒアルロン酸、グロースファクター等々)を豊富に含有する万能エキスです。
プラセンタは、人間では約10ヶ月に1個の胚細胞をおよそ60兆個まで増殖させる働きをするのと同時に、各種臓器・器官を作っていきます。
プラセンタは人間の体内組織や臓器など、さまざまな生理機能の調節にかかわる生理活性物質を合成し、継続して母体で胎児に与え続けるのです。
つまり、プラセンタには他の組織や臓器とは異なる、多種多様な活性物質を総合的に含有しているのです。
胎児を出産すると同時に胎盤は体外へ排出されますが、歯科治療をはじめ、医療全般において、このプラセンタの効果を活用する方法が開発され、既に50年以上前から、肝炎や女性の場合、閉経前後の更年期障害の治療に使われてきてます。
また、美容業界ではプラセンタエキスを体内に注入することで、全身の細胞を活性化させ、自然治癒力を向上させるとして、効果が高い施術法と評価されています。
プラセンタは、日本国内のみの感染症のない健康なヒト胎盤を原料としており、ホルモンやたんぱく質などは含んでおりません。
胎盤は酸で加水分解し、121℃で30分間最終滅菌するなど、感染症に対する安全対策には万全を期しております。
なので、これまで50年もの間、細菌やウイルスなどによる感染の例はありません。
一般的に、ヒト胎盤繊毛分解物が1アンプル(2mL)内に100mg含まれているプラセンタ注射を用いるクリニックが多いようです。
歯科におけるプラセンタ療法とは
プラセンタは、はじめは歯科治療での活用ではなく、肝炎の治療薬として厚生労働省から認可を得ていました。
しかし、プラセンタの効能を歯科治療に活かせないか?という発案で、歯や口腔分野での臨床実験が行われました。
歯科分野に応用しても、歯周病をはじめ、親知らずの抜歯後やインプラントなどの外科処置後の創傷の速やかな回復、口内炎への解消などに評価が高まっています。
とりわけ、近年歯科治療で浸透しつつあるインプラント手術においては感染防止を含めての効果が期待されています。
さらに、歯科治療でのプラセンタ療法にはアンプル(注射)を用いることがあります。効果としては短時間ですが即効性というメリットが挙げられます。
顎関節症が原因で、筋肉や関節周囲に炎症を起こしている、咬合の不具合により首周りや肩が凝って困るという患者様や、歯軋り食いしばり癖に有効な治療とされています。
プラセンタ療法の種類
では、実際に歯科分野ではどのような種類のプラセンタ療法があるのでしょうか。
注射薬
先ず、一番メジャーなプラセンタ療法は、注射薬による治療といえるでしょう。
現在では「メルスモン」か「エランネック」というメーカーのプラセンタ注射が日本では採用されています。
「メルスモン」はヒトの胎盤から抽出される成分のほか、臍帯や羊膜も使用されています。
歯科分野では「メルスモン」注射を用いるクリニックや歯科医師が比較的多いようです。
これまでに、細菌やウイルスなどの感染報告は見られず安全性に高い評価を得ています。
また、プラセンタの効用として本来、更年期障害にも効果があるといわれているので、閉経後など、女性ホルモンが低下する事で発症する、不眠、肩凝り、のぼせや冷え性、イライラ、頭痛腰痛、関節痛など様々な症状を緩和する事が期待できるとして評判の注射薬もメルスモンです。
注射は大きな効果が期待できますが、プラセンタエキスが特定生物由来製剤(プラセンタは臓器由来)となるのでデメリットとしては一度注射をすると、献血ができなくなります。
なので輸血を受けた人が献血できなくなるのと同様となりますのでこの点だけご注意ください。
サプリメント
注射を躊躇してしまう患者様にはプラセンタのサプリメントでも、同様の効果が見られますので、おすすめです。
注射は痛いし、クリニックに集中して通う事がなかなか出来ないという患者様に向けて開発されたのが「メルスモンピュアカプセル」です。
飲むだけなので手間も掛からず、ご自宅で簡単にプラセンタ療法を行えます。また注射と併用して早く結果を求める患者様にも適用されます。
プラセンタのサプリメントには多数の生活活性物質が自然の状態で混和されていて、簡単で安全に服用いただけます。
医療機関限定の「ヒトプラセンタ」のサプリメントには、錠剤2カプセルで、皮下注射同様の効果が期待できるといわれています。
プラセンタ口腔内ジェル(歯科医院専売品)
プラセンタの効能をもっと身近に感じるのに適した療法として、プラセンタ口腔内ジェルを使った治療方法もあります。
プラセンタ口腔内ジェルを手に取りご自身の指を使って、じっくりと歯肉マッサージを行うと唾液の分泌も向上します。
歯茎にはたくさんの血管がありますが、プラセンタ口腔内ジェルを使いマッサージすることで血行がよくなり、歯肉への血液循環が促進されます。
プラセンタジェルのマッサージを続けることで自浄作用も高まり、歯肉の血流改善とともに、歯周病予防、自律神経を整える作用も期待できます。
プラセンタ療法の歯科的効能・効果
中年期に入って、なかなか疲れが取れない、お肌の調子がすぐれない・・・、このような誰でも迎える不定愁訴に、プラセンタ療法で、血行が促進されて体の疲れが解消されていきます。
プラセンタにはコラーゲンの生成を促進する働きや抗酸化作用もあるので、細胞の老化を阻止する効果があるとされます。
プラセンタ療法を行うことで、本来の健康的な状態に戻り、若さをキープすることが期待できるのです。
アンチエイジングとして絶大な効果を上げている療法といって過言ではありません。
では、実際に歯科分野でプラセンタ療法はどのような効果が期待できるのでしょうか。
歯周病予防
歯周病は放っておくと様々な深刻な病気の原因にもなってしまいます。
日々のデンタルヘルスケアで、管理していくしか歯周病を防ぐ方法はないでしょう。
そこで、プラセンタ療法を活用しましょう。
歯茎が腫れる歯肉炎や、歯肉炎が悪化して起きる歯槽膿漏などの歯周病に対し、プラセンタの抗炎症作用が症状を抑える役目を果たします。
先述の「プラセンタ口腔内ジェル」によるマッサージ療法などで、歯周病に効果が期待できます。
口内炎の改善
中年期におけるホルモンバランスの崩れ、日々の生活でのストレス、栄養不足などによる口内炎にも、プラセンタ療法は効果が期待できます。
プラセンタには口腔内の炎症を正常な口腔環境に整える働きがあります。
顎関節症の改善
歯科では「顎関節症」にもプラセンタ療法を用いて治療する場合もあります。
「顎関節症」とは、顎関節周囲の靭帯や筋肉の不具合により顎がスムーズに動かない症状がみられる症候群を指します。
「顎関節症」に罹ると、体全体の不調の原因となり、肩こり、首の周りのコリ等の不定愁訴を繰り返してしまいます。
歯科治療での咬合調整の際に、プラセンタで筋肉注射や咬合に関係しているピンポイントへの注射をすることで、咬み合わせの不具合を緩和するという治療を行います。
プラセンタ療法の一般的効能・効果
プラセンタは元来、肝炎や更年期障害の治療に効果が期待できる治療薬です。
また、先程からご説明しているように、プラセンタは病気の治療に使われるだけでなく、疲労の回復やアレルギー疾患の改善、自己免疫疾患、若返りなどのアンチエイジングや美容効果が認められるなど、幅広い分野で活用されています。
最近の研究ではプラセンタには、【細胞増殖分化誘導因子】という胎児を形成させるために特に必要な因子が入っていて、それが胎児のそれぞれの臓器を生成するための指令を与えていることが判明しました。
プラセンタ内の細胞増殖分化誘導因子は、なんと成人にも有効に働きかけますので、自然治癒力の向上の他に様々な効能や作用が期待されています。
では、プラセンタ療法の一般的な効能、作用はどのようなものでしょうか。
抗酸化作用
プラセンタには優秀な抗酸化作用があるので、体内で細胞を傷つけたり体を錆びさせる活性酸素を除去し、肌の老化の進行を防ぐなど体にいい影響をもたらします。
抗アレルギー作用
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、などの様々なアレルギーに対して、プラセンタの抗ヒスタミン作用や鎮炎症作用で辛いアレルギー反応の緩和的役割が期待できます。
血行改善作用
更年期以降に起こる、血行不良などにもプラセンタ療法は役立ちます。プラセンタの特徴の1つでもある血行改善作用によって、血流を促し、体全体に新鮮な血液を巡らせる効果を促進します。
抗疲労作用
更年期などによって、甲状腺ホルモンの分泌が低下して、活動性が低下する疾患「甲状腺機能低下症」という症状があり、この事が原因で体力低下や全身倦怠感などが表れます。
プラセンタ療法によって、抗疲労作用が働き、これらの不定愁訴にも適用されます。
自然治癒力を高める
プラセンタは究極の「生命維持装置」でもあるので、プラセンタ療法でご自身の自然治癒力が高まる効果も期待できます。
肝細胞再生作用
プラセンタ療法で、強肝・解毒作用が促され肝臓の働きを強化する手助けをします。つまり幹細胞再生作用も有効とされています。
つまり、肝硬変、脂肪肝、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎などの治療にも適用されています。
創傷治癒促進作用
上記のようなさまざまな作用を総合すると、傷の治りを早める効果が認められます。
例えば、身近な例を挙げると、肌荒れやニキビ跡の改善に効果的が見られますので、美容分野でもプラセンタ療法が広く扱われています。
美肌効果
赤ちゃんの肌は、当然ながらシミもくすみもなく透明感とみずみずしさにあふれていますね。
プラセンタエキスで生成された若々しい細胞組織が、赤ちゃんのきれいな肌として表出されています。
女性の一番の関心事である美容分野で、「美肌」は最大のテーマでしょう。プラセンタ療法を活用すれば、女性の悩みである「お肌の不調」が解消されると評判です。
美白、たるみ改善、シミ・シワの解消にも美容外科などで、プラセンタ療法は「定番」となっていますね。
プラセンタ療法の副作用・注意点
プラセンタ療法は50年近くの歴史がありますが、その間に重篤な副作用の症例報告はありません。
ただ、プラセンタの原料によって、患者様への不適合がある場合が極々わずかにある可能性も否めません。
化粧品の成分としてのプラセンタは豚や馬が主流ですが、以前は牛の胎盤が使われていました。
しかし、1986年の狂牛病(BSE)発生以降、日本では牛のプラセンタの製造や販売は禁止とされています。
ほとんどのクリニックで使用されているプラセンタはヒト由来のみです。
とはいえ、患者様によってはプラセンタ治療後、発熱、悪寒、発疹、悪心などの症状があらわれるケースもあります。
特に多く報告されてる症例は、初回の注射後に微熱が続くことされています。
しかし2回目以降は、安定してくるので経過観察が必要とされます。
また、注射部位の疼痛・発赤などの症状が認められますが、たいてい数日で治まります。
患者様にご注意頂く点として、なるべく患部に触れないようにお願いしております。
そして、注射部位のかゆみ・頭痛・肝機能障害なども起こりうるケースです。
こちらも通常、1~2日で消失していきます。
クリニックで幅広く使われる、プラセンタ製剤の「ラエンネック」「メルスモン」は厚生労働省に認可されており、ヒト由来のタンパク質やアミノ酸を含みます。
それが原因となりアレルギー体質の人が使用すると、喘息などのアレルギー悪化やショック症状を起こる可能性も否めません。
特に患者様の体力が著しく低下しているときは、副作用が起きやすくなるので注意しなければなりません。
必ず担当医とご相談ください。
皮下および筋肉注射という適切な使用下でのデータでは、ほとんど問題が起きたことはないにせよ、プラセンタ療法は、皮下注射(ツボ注射を含む)、筋肉注射のほか、各クリニックや医師の判断に基づいて静脈注射、点滴注射が行われる場合もあります。
皮下注射や筋肉注射については、重篤な副作用が起こる可能性は低く、比較的安全と考えられています。
ところが、静脈注射では、ショック症状の症例が報告され、日本胎盤臨床医学会では、静脈注射および静脈に投与する点滴を推奨していません。
関節包(関節を包んでいる筋)に注射する関節腔内注射や、埋没療法(皮下組織にプラセンタを埋め込む方式)についても、安全性は確立されていません。
以上の事を鑑み、プラセンタ注射を行う場合、ほとんどのクリニックでは患者様から同意書を頂く傾向が多いのです。
プラセンタ療法がお勧めの患者様
プラセンタ療法をお勧めしたい患者様とその理由について、ご説明します。
プラセンタを服用すると、明らかに体調が良くなり肌が綺麗になり、更には精神の安定までが感じられます。
慢性疲労にお悩みの患者様には安息を、加齢が原因で元気のない患者様には活力を、ストレスなどで精神的に落ち着かない方には冷静さ、などと多種多様な効果が期待できるのがプラセンタ療法です。
また、もっと分かりやすい疾患としてはアトピーでお悩みの患者さまが挙げられます。体質が良い変化があり、治癒に向かう症例も多数あります。
そして、特に女性の患者様では更年期障害、冷え性、生理不順等の不定愁訴でお悩みに、プラセンタ療法をお勧めしており、大変好評を頂く事例が多いです。
当院での治療法
大崎シティデンタルクリニックでは下記のような流れでプラセンタ治療を行っております。
治療の流れ
【STEP1】問診 カウンセリング
【STEP2】プラセンタ治療:利き腕とは反対の腕に注射を行います。
【STEP3】定期的な施術:効果が得られるまで2〜3回治療を行います。なかなか効果が見られない場合、5回程度は継続を推奨します。
治療費
治療費に関しては患者様それぞれのケースによりますのでクリニックまでお問い合わせください。
よくあるご質問
こちらの項目では、プラセンタ療法に対して患者様から「よくあるご質問」についてまとめてみました。
Q1:プラセンタを何回くらい施術、服用で効果がでますか?
A1:患者様個々人の症状や病歴などで多少の誤差がありますが、大体2~3回の治療で効果が得られると思われます。
もし、なかなか効果がみえなくても、5回程度は継続を推奨します。
プラセンタ注射は、一度だけではあまり効果が表れないので、こまめに摂取することを勧めています。
はじめのうちは1週間に2~3回、その後2週間に1回くらいのペースが効果的と言われています。
また時々、治療開始後、一時的に病状の悪化や、身体的倦怠感が現れることもありますが、これは「好転反応」といって、暫く続けていくうちに症状改善する兆候であることが、経験値的に言えます。
Q2:プラセンタ療法を継続して問題はないですか?
A2:プラセンタは自然の薬で、この療法を長く継続されている患者様はいらっしゃいますが、今までに副作用の事例がありません。
ステロイド剤などと違って、プラセンタ療法は体の不調な部分を補い、調節していくシステムですので、必要以上に活力があふれたりはしません。
つまり必要以上に治療を継続してもあまり意味がありません。
治療の当初にある程度集中的に治療を受け、症状の改善がみられたら徐々に治療の回数を軽減していく、という段取りで行います。
患者様ご自身で不調を感じられたときや、何らかの自覚症状が出たときに、再度治療を開始することで、問題ないと思います。
Q3. 目的によって治療方法が変わるのでしょうか?
A3.目的によって注射の量や投与方法をご提示します。
・ご年配の患者様の健康維持や、若返りをご希望の患者様
活性成分の不足や、体内での合成能力が低下している状態に、プラセンタ療法で活性成分を継続的に補う目的で1週間に1~2回受診されることをお勧めします。
・年齢層が若い患者様、健康な患者様の疲労回復や美容目的
週に1回程度、または、極度の疲労やお化粧ののりが気になる時、肌がくすんできたなどの自覚症状がある時にだけ、カンフル剤として緊急処置的に、注射を受ければ充分でしょう。
・疾病の治療、治療補助の目的の患者様
「イニシャル・ロード」や「ローディング・ドース」と呼ばれる投与法として、治療を開始後、最初の2週間だけ、できるだけ毎日注射を受けることをお勧めします。3週間からは、医師の指示を通り適宜、プラセンタ療法を継続してください。
Q4.プラセンタの安全性は?
A4. プラセンタは血液製剤ではありません。プラセンタ中のホルモンや血液は、製造過程で完全に除去されるため、アンプル剤の中に感染症リスクや、副作用が心配されるホルモンや血液は含まれていません。
また、プラセンタは塩酸による加水分解に始まり、何工程もの安全処理を施され、各種感染症の汚染がないことがチェックされた上で、製品として流通します。
全ての医療機関で使用されているのは、厚労省認可のプラセンタです。また、ヒトプラセンタの使用は厚労省より、医療機関のみに許可されています。