「口を開けて笑ったときに歯の汚れが気になる…」という方は意外と多いものです。歯を白く、美しくするために歯科に通う人も多く、その治療のひとつである「ホワイトニング」という言葉を耳にすることもあるでしょう。

近年、短期間で美しい歯を手に入れることができると注目されている治療が「ラミネートベニア」です。これは簡単に言えば「歯を削って薄いシェルを貼り付ける」という施術方法であり、すでに多くの人々に選ばれていますが、「削る」ということに不安がある人も多いのではないでしょうか。

ラミネートベニアは安全性の高い治療ですから、きちんとした知識さえあれば問題なく試すことのできるものです。そこで今回は、ラミネートベニアがどのような施術方法であるか、どんなメリット・デメリットがあるのかについてご説明します。

歯を短期間で白くしたい方、すでにホワイトニングをしているもののメンテナンスに時間や費用がかかっていて悩んでいる方などは、ぜひご一読ください。

ラミネートベニアとは?

まず、「ラミネートベニア」がどんな施術方法であるかご説明します。なお「ラミネート」には「別々のものを貼り合わせる」、「ベニア」には「張り板(を被せる)」という意味があります。

セラミック製の薄いチップを歯に貼りつけて、歯を美しく見せる審美歯科

ラミネートベニアとは、基本的には「歯の表面」を美しく見せるための施術法です。比較的簡単な施術で歯を白く、美しい形に見せることができます。

方法は「歯の表面をごく薄く削り、そこにセラミック製の薄いカバーのようなものを貼り付ける」というもので、削った歯に張り付けるものを「チップ」や「シェル」と呼びます。

近年ではガラス系セラミックやジルコニアなどの材料も使われております。

歯の隙間やねじれてしまった歯の形を修復することができる歯科治療

ラミネートベニアは歯の表面を美しく見せる施術法ですが、これにより次のようなことも解決できます。

・歯の隙間が空きすぎてしまっている部分をほどよく埋めることができ、歯並びがよく見える

・生え方がねじれている歯の形を調整し、正しい位置にあるものに近づけることができる

・削れている歯、小さな穴が開いている歯をカバーすることができる

ラミネートベニアの歴史とは?

ラミネートベニアにはどんな歴史があるのでしょうか。この施術法が登場した経緯などについて見てみましょう。

1920年代にハリウッドの映画で撮影用に用いた取り外し式の差し歯が発祥

ラミネートベニアが登場したのは、1920年代のハリウッド。端麗な容姿だけでなく、歯の美しさも求める俳優たちが用いたのが始まりではないかと言われています。

1990年代には歯の色をしたプラスチック(レジン)を貼り付けて活用

ラミネートベニアが登場する以前にあったこれに似た施術法としては、「クラウン」によるものがありました。クラウンは施術法の名称ではなく、歯を修復するのに利用する金属やプラスチックなどの修復物の総称です。

1990年代、一本の歯の全体を綺麗に見せるために利用されていたクラウンは、歯の色をしたプラスチック(レジン=合成樹脂)でした。これを削った本物の歯に張り付け、活用していたのです。

ただし、プラスチックは小さな穴が開いている「多孔性」という構造になっているため、口の中で唾液を吸収し、変色・変質を起こすため、長持ちしないという欠点がありました。

近年にプラスチックに代わり、セラミック(ポーセレン)を活用

近年のラミネートベニアでは、プラスチックではなく「ポーセレン」というセラミックがよく利用されています。セラミックは白く、金属のように目立たない上に変色しません。金属アレルギーの方でも利用可能です。表面がすり減ることもないため、メンテナンスの頻度も低くて済みます。

なお、現在もレジンが改良されたものは利用されています。「ガラス系セラミック」「ジルコニア」という素材であることもあります。

ラミネートベニアの施術方法とは?

ラミネートベニアはどのように施術を進めていくのでしょうか。その手順や方法をご案内します。

1:歯科医師とのカウンセリング

まず、ラミネートベニアの施術を行う歯科医師とのカウンセリングが行われます。自分が希望する歯の白さや形状、どのような歯になりたいのかといったイメージを共有し、完成した際に「イメージ違い」が発生してしまわないようにします。また、今後どのように施術が進むかについても説明を受け、費用面での無理がないかといったことについても認識を合わせていきます。

歯の症状によっては他の施術のほうが適している場合や、ラミネートベニアを希望しても適性でない場合などもあり、治療前のカウンセリングは非常に重要です。歯の状態を知るため、歯の写真撮影、レントゲン撮影なども行います。歯型を取り、完成した状態の模型を作ることもあります。

2:歯の形成、型取り

セラミックシェルを貼り付けるため、歯の表面を削ります。表面から0.3~0.8mmというわずかな厚みであり、削るのは神経に影響しない部分であるため、麻酔を用いる必要もありません。

なお、削らなくてよいケースもあります。「唇側」(表の唇に触るところ)に違和感がない、歯の厚さが気にならない、ということであれば、全く削らないということも可能です。

想像では判断が難しいため、歯を削る前に「シミュレーション用のシェル」を着け、数日過ごす方法もあります。これには、以下のようなメリットがあります。

・長さ、向き、口の中の感覚などを確認できる

・自分と医師以外の目で確認できる

・削る前であり、やめることもできる

・これらの情報を医師と共有でき、より自分にフィットするチップをつくることができる

その後、セラミックシェルを作製するための型取りを行います。歯の表面のカーブや凹凸などを「正確」に型取ることで、よりぴったりと接着することが可能なセラミックシェルを作製することができるためです。

3:セラミックシェルの作製

型取りを元に、セラミックの歯を製作します。なお、セラミックシェルの作成には一週間から二週間程度かかるため、その間は仮の歯で削った歯をカバーし、日常生活に支障がないようにします。セラミックシェルを歯科技工士が作成します。材料がジルコニアの場合は、当日の完成も可能な場合があります。

4:セラミックシェルの接着

機械で削り出したセラミックの薄い板のような形に作り上げられたセラミックシェルを、接着剤で貼り付けます。接着剤は特殊な光を当てることで硬化するタイプのものです。しっかりと歯に貼り付けた後に、セラミック周辺を磨き、高さに凸凹が出ないよう周囲の歯になじませて完成です。施術としてはこれで終了ですが、経過予後確認のための来院が必要になる場合があります。

ラミネートベニアの通院回数の目安とは?

通院回数は2~4回の歯科医院やクリニックが多いでしょう。一般的には次のような流れです。

1回目:歯科医師とのカウンセリング

2回目:歯の形成、型取り

3回目:セラミックシェルの接着

4回目:経過予後確認

1回目にカウンセリングから型取りまでを済ませる場合もあります。セラミックシェルの製作に時間が必要ですので、2回目と3回目を同時に行うことはありません。

ラミネートベニアのメリットとは?

ラミネートベニアのメリットについて説明します。

1本だけの治療から上下の前歯全てまで治療可能

治療の規模を柔軟に変えることができます。1本だけをラミネートベニアで美しくすることもできますし、あるいは上下の前歯をすべて治療することも可能です。

ただし、ラミネートベニアでの治療が難しい場合もあるため、治療に際しては医師とのカウンセリングが必要です。

なお、他の治療に比べて短期間で完了するのも、大きなメリットと言えるでしょう。治療する歯の本数が多くとも、通院回数が増えたり、治療期間が大幅に伸びたりすることはありません。

長い期間美しい歯をキープできる

金属や合成樹脂などと比較して、セラミックという素材は変質しづらく、削れたりすることも少ないものです。汚れや色素がつきにくいので、1度の治療が完成すれば、長期間美しい歯を保つことができます。アレルギーを起こしづらいというのも大きなメリットです。

自分の歯を多く残せる

天然歯(もともと生えている歯)は一度失ってしまうと、二度と戻ることがなく、貴重なものです。エナメル質範囲内の(0.3~0.8mm程度)削るだけで治療が可能なため、自分の歯を多く残せるというメリットがあります。

神経が通った歯の重要性は非常に高く、歯科業界としても「できるだけ自分の歯を残す治療」が推奨されています。以前は歯そのものを入れ替える治療が多かったために、入れ歯・差し歯なども多用されてきましたが、ラミネートベニアであれば最大限歯を残して自分の望む歯の色や形を手に入れることが可能です。

施術を受けていない歯と馴染む

施術前のカウンセリングで自分の歯の色調に合うよう調整を行うため、自分の歯の色と馴染み、ラミネートベニアを行った歯が目立ちません。「前歯の1本だけが不自然に白い」ということもなく、全体として自然な歯になります。

ラミネートベニアのデメリットとは?

メリットの多いラミネートベニアですが、デメリットもあります。このデメリットをよく理解した上で選択することが重要です。

治療費の面で保険が適応されないこと

ラミネートベニアは保険が適用されないため、支払いはすべて自費となります。1本あたり5~15万円ほどがかかると考えられますので、保険診療と比べて大きな負担となります。

また、同じく「歯を白くする・美しくする」という保険外の治療である歯の漂白、「ホワイトニング」に比べると、治療費は高くなります。

施術内容の面で健康な歯のエナメル質を削ること

削る厚さが0.3~0.8mm程度であるとはいえ、健康な歯のエナメル質を削ることになります。美容的な観点からは必要であっても、医療的な観点で言えば不必要なものであり、この部分は、自分自身でよく検討する必要があります。

ただし、歯の状態が大きなコンプレックスとなり、人前に出る際などの精神的負担になることもあります。歯の健康だけでなく心の健康も含めてラミネートベニアの必要性を考慮するようにしましょう。

なお、先にもご紹介しましたように、歯を削らずに対応できるラミネートベニアもありますので、歯を削ることに抵抗がある方は歯科医師に相談してみてください。

セラミックが欠けることがあること

セラミックは非常に丈夫な素材ですが、人間の噛む力は非常に強く、食いしばったり歯ぎしりが続いたりすると、欠けてしまうこともあります。

加齢による歯茎の萎縮で再治療になる場合があること

ラミネートベニアは事前のカウンセリングやその後の微調整で歯にぴったりと合うものが作られますが、加齢により歯茎が委縮すると歯の位置・歯茎から出る部分の大きさなどが微妙に変わってしまい、再治療になる場合もあります。

ラミネートベニアが向いている人とは?

ラミネートベニアが向いている人とは、どんな人でしょうか。ご自身に当てはまるかどうか、考えてみてください。

短期間で美しい歯を手に入れたい人

ラミネートベニアの大きなメリットのひとつが、「短期間で治療が終わる」ということです。あまり治療にかける時間がない、できるだけ短期間で歯を綺麗にしたい、という人にお勧めです。

歯の白さだけでなく、形やすきっ歯を治したい人

ラミネートベニアは歯と歯の間が広く開いてしまっている歯も美しく見せることができます。歯を白くしたいだけでなく、ある程度歯並びをよく見せたいという人にお勧めです。ただし、大幅な歯並びの矯正はできません。

歯の変色が強くホワイトニングで白くならない歯がある人

ラミネートベニアは歯の表面を薄く削るため、ホワイトニングでは取れないような歯の汚れや変色にも対応できます。なお、失活歯(虫歯や神経を取る治療のために歯髄が死んでいる歯)についてはラミネートベニアが可能な場合とそうでない場合があるため、確認が必要です。

ラミネートベニアが向いていない人とは?

では、ラミネートベニアが向いていない人とはどんな人でしょうか。

大きなむし歯のある人

ラミネートベニアは「貼り付ける」という治療であるため、虫歯などで貼り付ける面に大きな穴が開いている場合には、治療ができない場合もあります。別の治療を組み合わせるなどの方法を模索する必要があるでしょう。

歯ぎしりや噛み締めの癖のある人

先に触れたように、歯ぎしりや噛み締めなどで強い力が加わると、セラミックが割れてしまうことがあります。歯ぎしりや噛み締めは寝ている間に行われていることも多く、自覚がない場合もあるため、歯科医に確認してもらう必要があります。これらは歯や歯茎の状態である程度確認することができます。

【まとめ】

ラミネートベニアはメリットが多く、より確実に歯を綺麗にできる方法です。同じく歯を白くする施術法には「ホワイトニング」各種もありますので、どちらが自分に合っているか、費用の面も含めて比較検討してみましょう。「歯の色を白くしたいが、歯の形も治療したい」という場合には、ラミネートベニアがちょうどよい治療である可能性が高くなります。ラミネートベニアを行う歯科は年々増えており、インターネットでも検索することが可能です。ぜひ一度、検索してみてください。

なお、当院でのホワイトニングに関する詳しい内容はこちらよりご確認いただけます。