ラミネートベニアは、「歯の表面をごく薄く削り、セラミックなど透明性の高い材質の『シェル(チップ)』を貼り付けて歯を白く見せる」という審美歯科の施術のひとつです。この施術によって、ホワイトニングでは対応できないような歯の着色にも対応できますし、短期間で治療が終了する、白い歯を長期間維持できる、というメリットがあることから、多くの人々がこの施術を選んでいます。

気になるのは費用のことですが、1本あたりおおよそ5万円から15万円という金額の幅があります。同じラミネートベニアであっても、どのような施術になるのかは異なりますし、通院回数にもよります。あくまでも目安として、ご自身に必要な施術の程度や選んだ歯科の場合を前提に考えるようにしましょう。

今回は、ラミネートベニアで歯を白くするために必要な費用について詳しくご説明します。

また、ラミネートベニアは「歯科治療の一種」ということで、痛みに対しての不安を抱く方も多いと考えられます。そこで、治療の痛みについてもあわせて解説したいと思います。

ラミネートベニアのメリットとは?

まず、ラミネートベニアのメリットをご紹介します。冒頭で「1本あたりおおよそ5万円から15万円」と説明しましたが、この費用が「それだけの価値があるものかどうか」ということを判断することが重要ですから、そのためにもラミネートベニアのメリットをしっかりと把握しておきましょう。

自然な歯に仕上げることができる仕上がりの良さ

ラミネートベニアは「エナメル質」という、歯の最も表面にある組織を0.3~0.8mmほど削り、そこにセラミック製のシェル(チップ)を貼り付けるという施術です。シェルは歯を削った後に型を取り、歯の形にぴったりと合わせたものがつくられます。形は「付け爪」に似ています。また、貼った後も微調整を行い、違和感のないように仕上げていきます。

セラミックシェルの色については、事前に希望を確認され、サンプルを利用して「周辺の歯に合う色はどんな色か」を知り、選ぶことができます。ラミネートベニアを施術した歯だけが白すぎて目立ってしまうことのないよう、調整が可能なのです。施術後は、歯全体を見ても「不自然さ」出ないような仕上がりとなります。

汚れや色素が付きづらく長期間美しい歯をキープ

ラミネートベニアにセラミックやガラス系、ジルコニアなど吸水性のない材質を選んだ際に利用されるチップは、自然歯よりも硬く、長期間口の中にあっても人体に悪影響を与えない材質です。汚れや色素(コーヒーや紅茶、緑茶、煙草の汚れなど)が付きにくいのも特徴であり、長時間美しい歯を維持することができます。

接着剤の進化が著しい現在、ラミネートベニアは、メンテナンス次第で10年から20年はもつと言われています。歯医者で行うホワイトニングの耐久期間が数ヶ月~1年程度であるのと比較しても、長持ちする施術です。初期費用が高めになるものの、耐久年数で考えた際には非常にコストパフォーマンスがよいものと言えるでしょう。

徐々に白くするのではなく、「施術した日」から白くなる

ラミネートベニアは歯の色を徐々に落としていくといった方法ではなく、いわば「表面を別の材質に張り替える」という施術ですので、その日から白い歯を手に入れることができます。
ホワイトニングのように「何ヶ月か掛けて徐々に白くしていく」といった方法ではないため、大勢の方々の前に出るイベントなど、「綺麗な歯で参加したい」という機会が近日にあっても、それに間に合うようにスケジュールを組むことができます。ある程度長期間をかけてのケアが可能であれば、ラミネートベニアにするか、ホワイトニングにするか、ホワイトニングを行ってからラミネートベニアをするか、費用や効果についてよく比較して決定するようにしましょう。

ラミネートベニアの料金とは?

この章では、ラミネートベニアの料金についてご説明します。費用に対してどの程度の効果があるのか、コストパフォーマンスの面で他の施術と比較してみてください。なお、ラミネートベニアを施術する歯科や歯の状態などによっても差がありますので、ここでの料金は目安までに留めておきましょう。

ラミネートベニアは保険適応外、自由診療で治療可能

ラミネートベニアは「自由診療」という範疇の治療です。自由診療とは、公的な各種医療保険が適用されない治療のことを言います。高度な医療や美容的観点での治療については、自由診療であることが多いのです。

保険が適用されれば、医療費の負担は一部となりますが、自由診療の場合は補助がないために全額自己負担となります。そのため、ラミネートベニアは一般的な虫歯治療に比べ高額となります。なお、歯並びを治す「矯正治療」の一部や、ラミネートベニアと同じく歯を白くする施術である「ホワイトニング」なども、自由診療となります。

ラミネートベニアは1本につき5~15万円程度で施術可能

ラミネートベニアの施術は、1本の歯につき5~15万円となります。費用に大きな幅がありますが、「医院によって費用が大きく異なる」というのは自由診療の大きな特徴のひとつです。同じ目的の治療であっても材質の違い、用いる機器や薬剤、技術が異なるために、費用にも差が発生します。それだけ「治療や治療に使われるものの選択肢がある」とも言えるでしょう。

利用者は、「この歯科医院はどんな治療を行うのか」を把握した上、複数の歯科医院やクリニックの治療内容と費用を比較してみることが重要です。同じようなケースで費用が大きく異なる場合には、なにか別の部分で差があるのかもしれませんし、単純に価格設定が高い歯科である可能性もあります。

なお、同じ歯科医院・クリニックであっても、もともとの歯の状態や歯並びなどによって必要な治療が異なり、結果的に費用も異なるケースがあります。カウンセリングでは次のようなことをきちんと確かめるようにしましょう。

◇カウンセリングで確認したい内容
・ラミネートベニアに使用する材質の違いと特徴
・削らなくても可能か、不可能か、削るならどのくらい削るのか
・自分の歯はラミネートベニアの治療に適性であるかどうか
・術後の痛みが発生する可能性(その場合の治療法)
・基本的な治療をした場合の費用
・基本的な治療以外に必要になる可能性のある治療と、その場合に追加される費用
・やり直しになった場合の費用
・アフターフォロー(施術の後のメンテナンス等)に必要な費用
・同じ目的で、別の施術方法がある場合は、その方法(ホワイトニングなど)

なお、最近は削らないでセラミックを貼る「ルミネアーズ」という方法も生み出されています。ルミネアーズを扱っている歯科はまだ少なく、費用もラミネートベニアの倍ほどかかる可能性があります。ご興味のある方はぜひ調べてみてください。

ラミネートベニアの治療期間とは?

ラミネートベニアはホワイトニングとは異なり、数ヶ月のあいだ歯科医院やクリニックに通い続ける必要はありません。短期期間で治療が終わるということで、忙しい現代人にも注目されている施術です。以下、さらに詳しくご説明します。

治療回数は基本的に2から4回程度かかる

ラミネートベニアの基本的な治療回数は、2回から4回程度、多くて6回ほどと考えておけばよいでしょう。治療の流れは次の通りです。

1.カウンセリング
ラミネートベニアとの適性を調べてもらいます。治療方法や費用など、ラミネートベニアに関する説明を受けます。患者やこの治療で叶えたい歯の色や状態などを伝えます。

2.診断材料の採取
現在の歯型の型取り、お口の中や顔貌の写真撮影、各種レントゲン撮影、など。

3.2回目のカウンセリング
診断材料より作製したシュミュレーション用ベニアを対象歯に着け、実際に完成のイメージを体感して頂きながら形態や色味も決めていきます。エナメル質を全く削らなくても可能か、など削る量も伝えます。クリニックと意思を共有する為の重要な工程です。

4.歯の表面のエナメル質を削り(削らない場合もあります)、歯型を取る
歯に貼り付ける「シェル」の型を取るため、歯を削ってから歯型を取ります。歯科医院・クリニックによってはカウンセリングと同日に行う場合もあります。

5.シェルを作製する
歯科技工士が指示された材質でシェルを作製します。この間、患者の歯には「仮歯」がつけられます。これにより、削られた部分が物を噛む振動や刺激などから守られることになります。シェルの製作に必要な期間は、一般的に1週間から2週間程度です。

6.シェルを歯に貼り付ける
完成したシェルを特殊な接着剤で歯につけます。接着剤は特殊な光を当てることで固まるため、一般的な接着剤のように「乾くまで待つ」ということはありません。接着剤が固まった後は医師が微調整や接着の確認を行い、ラミネートベニアは完成です。

これとは別に、予後観察やメンテナンスのために通院が必要になる場合があります。ラミネートベニアを長持ちさせてトラブルを減らすためには、「術後」のフォローも重要です。

ラミネートベニア完成には1週間から2週間程度かかる

以上のような工程を経るため、ラミネートベニアの完成は1週間から2週間程度かかることになります。ホワイトニングなどに比べると短期間で治療は完成しますが、シェルを作製する時間を短縮することはできないため、決まった予定までに治療を急ぎたいという方は計画的に治療を進めなければなりません。

施術完了後の確認を合わせて3~8週間で治療完了

ラミネートベニアは、一般的には1週間から2週間程度で完成しますが、場合によっては3~8週間程度の治療期間が必要になることもあります。

ラミネートベニアの施術において重要なのが「事前のカウンセリング」や「予後観察」です。事前カウンセリングは治療全体がスムーズに進むよう、医師と患者の意思を共有しておくために非常に重要なものです。

また、予後観察でラミネートベニアに異常が発生していないかどうかを確認するのは、ラミネートベニアのシェルを長期間安全に利用するためにも欠かせないことです。「特に問題がないと思うから」と自己判断で通院をやめてしまわないようにしましょう。

ラミネートベニアの痛みとは?

ラミネートベニアの治療は歯を削るものですが、基本的には痛みがありません。なぜ痛みがないのかその理由を理解しておきましょう。また、治療の後に痛みが出る可能性についてもご説明します。

施術中の痛み:痛みはなく基本的に麻酔を使わずとも治療可能

ラミネートベニアでは、歯の最も外側にある「エナメル質」という組織を0.3mmから0.8mmほど削るのが一般的です(削らなくても可能)。エナメル質自体は2~3mmほどの厚みがあり、削るのはその半分以下ということになります。エナメル質には神経が通っていないために理屈上は痛みを感じる可能性はほぼありません。
ただし、西洋人と比べ東洋人は歯の構造からエナメル質と神経の距離が近い事や、歯軋りや食い縛りなどのクセからエナメル質にキズが入っている事を考慮し麻酔をお勧めするクリニックも多いと思います。麻酔をするかしないか、担当医と相談してみましょう。

エナメル質の下の層は「象牙質」という柔らかな組織となります。無麻酔で削られている場合、ここに振動があると、その内部の神経に響いて痛みを感じます。歯科医は象牙質に触れてしまうことがないよう、細心の注意を払って施術を行います。また、象牙質まで削ると接着力が落ちる、とも言われています。

施術中の痛みの原因として、他の場所への振動や、すでにある虫歯、知覚過敏、歯肉炎等の可能性もあります。事前の診察はこれらのトラブルを見つけるためにも重要です。自分からも、普段から気になることを伝えておくようにしましょう。

施術後の痛み:稀に知覚過敏の症状が出る可能性はある

施術後については、まれに「知覚過敏」という症状が出る可能性があります。知覚過敏とは、痛みを感じる、しみる、という症状が出ることです。歯に冷たい食べ物や飲み物、あるいは冷風があたったり、歯磨きなどでブラシの先が歯を擦ったりした際に起きます。痛みは一過性のものであり継続することはありませんが、頻度が高ければ生活に支障をきたすこともあります。

このように感覚が過敏になる原因は、エナメル質の下の層である「象牙質」が露出することにより、歯への振動が刺激となって神経に伝わってしまうことです。とはいえ、すでにご説明したように、ラミネートベニアの施術においては象牙質が露出するほど削ることは、ほぼありません。あくまでも「知覚過敏に似た症状」であり、エナメル質が薄くなったことで痛みに繋がってしまった場合は、知覚過敏の薬を塗布し、感覚が落ち着くのを待ちましょう。
健康な歯の神経はとても賢く、知覚過敏など外側の刺激に対し内側から刺激を遮断する壁を作る機能が備わっています。

【まとめ】

自由診療であるラミネートベニアの費用の目安は1本あたり5~15万円と、金額に幅があります。歯科医院による金額の差を調べ、自分にとってそれだけの価値があるか、無理なく支払えるか、といったことも冷静に考えるようにしましょう。
それぞれの医院やクリニックのホームページを確認するだけでなく、電話で問い合わせる、直接訪ねてみるといったことも、施術に対する不安を取り除くためには重要です。情報収集を重ね、不安や疑問をなくした上で、ラミネートベニアを実施するかどうかを検討するようにしましょう。